大英博物館といえば、イギリス・ロンドンにある世界最大の博物館のひとつだ。
美術品、書籍、寄贈品など約800万点にのぼる収蔵品の中には、考古学的な遺物や遺産、民族誌なども含まれている。
その収蔵品の中に、ある『奇妙な点』が見つかった。
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奇妙なミイラの発見
5,000年前のエジプトでミイラとなった遺物に、造形的な『模様』が発見されたのだ。もし、これが世界で最も古いタトゥーだとしたら、考古学的な見識を更新する必要があるだろう。
刺青は男性のミイラ、女性のミイラの2名から発見され、それぞれが違う刺青が彫られている。
男性は上腕部に、野生の雄牛とバーバリー地方(アフリカ大陸北部)の羊
女性には上腕と肩部にS字モチーフのタトゥーが刻まれている
この発見により、以前考えられていたよりも1,000年早く、幾何学的パターンではない模様を含むタトゥーが存在していたことを意味する。
この発見は、古代の人々がどのように生活していたかの理解を促すだろう
古来より多くの意味がボディーアートや化粧にはあったことを知って欲しい。
現在のように公序良俗を乱す象徴ではなく、『勇気』『魔法の知識』を示すなど、アニミズムを含んだ『まじない』に近しいものだった。
野生の雄牛や羊も、力と精神力の象徴であり、狩猟に赴く男達にとってパワーを与える意味合いが強かったと思われる。女性のミイラにあるS字の刺青もステータスなど、身分を表す識別の意を含んでいたとされている。
それだけ古代人にとってタトゥーは、とても神聖なものだったのだ。単にオカルトな面が強かった訳ではない。
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現代になり、謎が浮かび上がった
エジプトのミイラ達は100年以上前の墓地で発見以来、毎年数百万人が訪れる大英博物館でもそのまま展示されていた。
5,000年前から変わらぬ姿で保たれていることから、当時の遺物保存技術の高さが窺える。
以前の研究ではジベレイン・マンAと仮称されたこの男は、約18~21歳までの間に『背中までに達する刺し傷で死亡した』ことが明らかになった。
しかし、自然光の下に晒され続けた結果、ジベレイン・マンAの刺青は最近になって現れたのだ。経年劣化による変化なのかもしれなければ、ミイラとなったジベレイン・マンAの肉体をなんらかの変化が起きたのかも知れない。
この奇妙な変質に対して、研究者達は赤外線で調査した。
その結果、前期エジプト美術でよく知られている、『ふたつの角の重なり合う動物の刺青』であることが判明した。
大英博物館の物理人類学のキュレーター(学芸員)、ダニエル・アントワーヌ(Daniel Antoine)は男性のミイラについて以下のように語っている。
ジベレイン・マンAは大英博物館でも最も人気のある展示物のひとつです。夏のピークに埋葬されたか、浅い墓地にあったために自然に近い状態で保存されていたのでしょう
世界中で最も古くから知られているタトゥーは、ほぼ同時期に起きた『エッツィ・ジ・アイスマン(Ötzi the Iceman)』から発見された、純粋に幾何学的なものだった。
人々が自分の身体にイメージを置く発想は、以前からあったもので、共通意識を高めるものだったのかも知れないです
以前の考古学者らは「古代の歴史の中で『女性だけが』刺青を彫っていた」と考えていた。
しかし、今回の新たな発見により、男女関係なく、タトゥーは用いられていることが示された。
刺青こそ、ステータスや勇気、知識を示す識別タグのような役割をしていたのかも知れない。ふたつのミイラはルクソール近郊、エジプト南部にあるゲベレーンで発見された。
彼らは紀元前3351年~3017年の間に生きていたとされる。
つまり紀元前3100年に最初のファラオによって統一される前の、古代エジプト人だ。どのような生活や文化を築いてきたか、興味深い存在でもある。
彼らが刺青に込めた思いも、いずれ明らかにされるのだろうか。