アフリカ大陸北部に広がる世界最大の砂漠、サハラ砂漠。アラビア語で『荒野』を意味し、その面積は860万k㎡とされている。
しかし、UMDの新たな調査によって『1920年以降、気候変動が一部起因して10%も規模が増加』していたというのだ。
メリーランド大学の地質学者は『世界最大の砂漠で起きた、世紀規模の変化』を最初に認め、他の砂漠も面積を拡大する可能性があることを示唆した。
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サハラ砂漠で起きている変化
2018年3月29日付に『Journal of Climate』でも、この研究はオンラインで公表されている。
砂漠は年間降雨量が少なく、通常は年間100mm(およそ4センチ未満)の雨量で定義される。
研究者らは1920年~2013年までの、アフリカ全域に記録された降水量のデータを分析し、大陸北部の大半を占めるサハラ地方は年率10%増加したことを明らかにしたのだ。
単純に860万k㎡から10%を割り出しても、86万k㎡。日本の全国土面積は37万8千k㎡。なんと1年で日本の倍近く広がっていたことになる。
UMDの大気・海洋科学教授であり研究者の一人、スーマント・ニガム(Sumant Nigam)氏はこう語る。
私たちの研究結果はサハラ砂漠特有のものですが、世界の他の砂漠にも影響を及ぼす可能性が高いのです
この調査結果は、人為的に引き起こされた気候変動と、大西洋数十年規模震動(AMO/Atlantic Multidecadal Oscillation)のような『自然気候の循環』によって、砂漠の面積拡大を引き起こしたとされている。
「ハドレー循環によって、亜熱帯地域では砂漠が形成されています。赤道周辺で上昇した空気が緯度30度まで北上してから、
再び亜熱帯地域付近に戻っていく。“気候変動はハドレー循環を広げ、亜熱帯砂漠を北上に広げる可能性がある”が、
サハラ南方のクリープ現象は、AMOのような気候サイクルを含む、追加的なメカニズムが働いています」と指摘されている。
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サハラ砂漠の拡大化がもたらす環境変化
サハラ砂漠の規模は現在、アメリカ本土とほぼ同じ大きさだ。
すべての砂漠と同様に、サハラ砂漠も季節と共に気候は変動する。夏には雨が収縮し、冬は乾燥しやすい。
気温にしても日中は肌が焼けるほどの熱気を放つのに、夜になれば雪が降ることもある。『砂漠の荒野』と言われるには充分過ぎるほど、過酷な環境が広がっているのだ。
さらにサハラ地方の国境から南には、肥沃なサバンナとの中間にある、半乾燥地帯であるサヘル地帯が隣接している。
サヘルには僅かながら植物が残されているが、サハラ砂漠の拡大によって規模を縮小し、残された草原の生態系やそこに住む人々の生活を脅かしている。
この稀少的に矛盾した遷移領域(transitional zone)の中心にあるチャド湖は、サヘルの状況を変えるためのシンボルとなっていた。
チャド盆地は、サハラを南下した地域にあり、湖は乾燥しています。
これはサハラ地方だけでなく、アフリカ全域に渡って降水量が減少していることを明確に示すほどの、広大なチャド盆地の降水量が減少している『重要な証左』という答えに集約されます
実は、よく知られている多くの気候サイクルが『サハラとサヘルの降雨に影響を与える可能性がある』という。
50年~70年の周期で大西洋北部の広範囲にわたる温暖な層と、寒冷の層で変動するAMOは一例にあたる。AMOの温暖層はサヘルの降水量増加と関連しているが。寒冷層では逆のこと(降水量の減少)が言える。
例えば1950年代~1980年代にかけてサヘルは著しい干ばつ期を迎えたが、やはり寒冷層が起因していた。
40~60年規模で起きる、北太平洋の気温変動によって特徴づけられる、太平洋十年規模震動(PDO)も同様の役割を果たしている。
アフリカという土地は、人類にとって特別な意味をもつ土地でもある。
文字がまだ発達していない時代から住まいつつ、過酷な環境と常に隣り合わせで『共存』していた。
だが、人間とは順応性を知恵で補わなければならない、複雑な生物だ。砂漠化した世界で生き続ける方法を、そろそろ模索しなければならない。