過去に生きた人間は教典、経書として未来へメッセージを向けてきた。
しかし、現代において明確に『未来へメッセージ』を向けようという試みが始まろうとしている。
「未来へメッセージ」プロジェクトに4,200万ドル(3,000万ポンド)の投資を行った、AmazonのCEO、ジェフ・ベゾス(Jeff Bezos)氏はソーシャルメディアに向けて発信した。
その映像の内容はなんと、1万年後に目を向ける為の巨大な時計の建設作業だった。
建設現場はテキサス西部のシエラ・ディアブロ山、この山中500フィートに埋めるのだという。
現在から見て1万年前は紀元前10世紀に当たる。
千年紀(ミレニアム)と呼ばれた中石器時代や亜旧石器時代の始まった頃だ。1万年先という時間の蓄積が、どれほどの変化を遂げるか想像すらつかないというのはお解り頂けるだろう。
映像内には空洞に時計のパーツを取り付ける様子が映されていた。
地熱で稼働するため、半永久的に動作するであろう1万年時計は、1時間ごとではなく、1日に1度チャイムを鳴らす。
そして時間の経過を記録して、何千年もの時間の中で動き続けることになるだろう。
これが人類の惑星への影響について考慮し『長期思考の象徴』として行動することが奨励されることを願っている
確かに、人間は将来へ漠然とした不安を抱えることもある。
目の前の問題ばかりに気をとられ、後々の影響まで考えられなくなることも。
そういった『短期的な思考』から一度離れてみて欲しい、という願いが込められているのかもしれない。
この時計は1989年からダニー・ヒリス氏が考案していたモデルだ。
1年に1度、100年ごとに進む時計を作りたいと思っていました。そして1,000年ごとに鳩が出てくるんですよ
このように大まかな構想について語っていた。
時計はギアに吊り下げられた大きな重しで動かされ、ステンレススチール、チタン、乾式セラミックボールベアリングで作られている。定期的なメンテナンスが必要になるだろうが、いずれも長期駆動に向けて、錆びや劣化への予防策を考えてのものだろう。
この時計はシエラ・ディアブロ山脈の地下500フィート(約150メートル)に建造中。
時計のチャイムは10,000年もの間、繰り返さないようにプログラムされている。しかも、チャイムが鳴るたびに、演奏されるメロディーも変わるという遊び心も含まれている。
完成予定日は未定だが、完成後はロング・ナウ協会の準備が整い次第、一般公開される予定だ。
訪問者は階段を上ると正午にチャイムを聴くことが出来る。
ベゾス氏は、このプロジェクトを2011年に着手し、以下のようにコメントを綴っている。
私は1万年先まで動く時計を建てているところです。それはシンボルになるように設計された特別な時計だ、長期的な思考の象徴です。我々が見ているように、人間は技術的に進歩しており、驚異的なミステリーだけでなく、文明規模の問題も生み出すことが出来るのです
――我々はもっと長期的な思考が必要だろう。
ベゾス氏は『長い目で見る思考』について、いかに重要であるかを説いています。
また、このプロジェクトには記念館設立も計画されている。
1年、10年、100年、1,000年、そして10,000年と節目ごとに経過した時間の記録が残されます。
1周年記念館は、太陽系の機械的モデルである特殊な起伏を含んだデザインになります。
惑星と地球、衛星の月に加えて、20世紀に打ち上げられた惑星間探査を含む。
時計は正午に、あらかじめ決められた日に、年に1度、オーラリー(太陽系儀)を起動してチャイムを鳴らす。
これは1万年先に生きる、現生人類に向けた明確なメッセージともとれる。
過去から予測した未来、未来から観測した過去の事象。
人間の生涯が長いようで短くとも、引き継がなければならない記録がある以上、歴史を補間するためにも重要なファクターとなるだろう。