地中に沿って掘り進めていくと、意外なものが出土することが多い。
日本でも住宅改修のため、地下を掘り進めたら土偶や土器が出土したなんてことも。

5.20.22

そんな珍事件は世界でも同じように起きているが、イタリアで見つかった『地下遺跡』はあまりにも美しいものだった。

イタリア軍が地下輸送システムの拡張作業をおこなっていたところ、およそ2,000年前に古代ローマ軍が使用していたと思われる、地下遺跡が掘り出されたのだ。

指揮官が使用していたのだろうか、その遺跡は別荘としての機能も充実している。

ローマ地下鉄C線の建造に取り組んでいる考古学者は、2016年に軍兵舎に隣接する、推定2世紀頃の住居(ドムス)を発見している。それと比較しても、豊かな装飾で施された住居は、美しい幾何学的なモザイク模様のタイル、大理石の床、フレスコ画を描いた壁を備えていた。
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この地下遺跡は地上から40フィート(約12メートル)下に埋没していた。中には14の客室、さらには噴水まで備えられていたという。

部屋のひとつは浴室になっていたようだ。

古代ローマ人は風呂好きであり、それを題材としたコメディ漫画『テルマエ・ロマエ(著:ヤマザキマリ)』も一躍話題となった。

紛争により公衆浴場文化は破壊されてしまったが、温泉(スパ)の人気ぶりは、古代ローマ帝国の名残を残す欧州全土でも変わりない。

今回の発見について政府関係者は「考古学的にも驚くべき建設現場だ」と表現した。

コロッセオの特別監督、ローマ国立考古博物館、考古学地区の官僚を務めるフランチェスコ・プロスペレッティ氏は以下のようなコメントを残している。

教授プロスペレッティ氏

同じサイズではありますが、よりスパルタ文化の濃い内装をもった別構造の基盤は、ほぼ同じ深さで覆われていたんです。おそらくその部分は『倉庫』として使用されていたのでしょう

この発見自体に驚きの声も多いが、もっとも驚くべきはその『保存状態の良さ』にあるだろう。

破損の少ないモザイクのタイルや、フレスコ画。これらの歴史的価値を考えれば、考古学者たちが驚愕するのは必然的だと言える。

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ニューヨークタイムズに向け、シモーナ・モレッタ女史はこのようにコメントしている。

研究者モレッタ女史

まさか、地下に中庭のある家を発見するとは想像もしていませんでした。モザイクパターンの床や、壁のフレスコ画の装飾も当時のままだと思われます。さらに4m下にも何かあるようですが、なにが出てくるか私達にもわかりません

地下ドームの壁は高さ約1.5フィートで、部屋には汚れも付着していた。専門家によると、この遺跡は3世紀頃に意図的に隠匿されたものだと推測している。

古代ローマ帝国の皇帝・アウレリアが紀元前271年に都市を守るために建造した外郭の建設作業を始める直前頃だという。

掘削工事中には、珍しい木製の工芸品も出土している。

これには、天井を支える木製の梁と同様に、土台を築いて建てる為に、こんにちまで使用されていたものに類似したタイプの形が含まれていた。

考古学者考古学者

メトロシステムの為に行われた掘削のおかげで、ユニークな発見が出来た!

確かに、学者視点から見れば古代ローマ帝国が残していった希少価値のある遺産だ。

イタリア政府としても残しておきたいところだろう。

残された遺跡や宝物は厳重に移送され、一時的に特別な保管庫に移されるそうだ。

イタリア軍の地下輸送システムの作業は継続されるということだが、作業が完了するまで、考古学者たちは『新たな発見がないか』と腰を落ち着けてはいられないだろう。